佐藤朱美《妖精たちのいたずら》(2018年)
作品の季節はいつだと思いますか?
ファシリテーター:
「(作品から少し離れて)まずはこの位置から、じっくり見てみましょう。」
「この作品、季節はいつだと思いますか?」
「筆談タイム 選んだ季節とその理由は?」
参加者A:
「春 ちょうちょらしき生き物が飛んでいます。全体的に明るい」
参加者C:
「春のはじめころ あたたかな太陽に向かっている感じがする」
【別の回では・・】
参加者D:
「冬 葉の落ちた大きな木(がある)」
参加者E:
「春 花っぽい色使い」
参加者F:
「春の芽吹いているイメージ」
ファシリテーター:
「ありがとうございました。では、今度は近づいてみましょう」
「もう一度、じっくり見てみましょう」
「指をさした部分のどのようなところから、そう感じましたか?筆談でその理由を教えてください」
参加者A:
「狐のような生き物が木の精霊のよう」
参加者B:
「これは現実ではない架空の世界」
門山幸順《カニギター》(2010年頃から)
このギター、どんなリズムが聴こえるでしょう?
ファシリテーター:
「次の作品はこちらです。まずはじっくり見てみましょう」
「このギター、どんなリズムが聴こえるでしょう?」
「攻める感じ? タタタタ♪ はねる感じ? タンタ ターン タンタ ターン♪ 流れるような感じ? ピロピロピローン♪」
「イメージしたリズムを手拍子やジェスチャーで見せてください」
参加者A:
(片手を振り下ろすジェスチャー)「タンタンタン」
参加者B:
(手の甲を叩きながら)「タンタン」
参加者C:
(上下に両手を振るジェスチャー)
【別の回では・・】
参加者D:
(弦を弾くジェスチャー)「ジャカジャカジャカ」
参加者E:
「シャカシャカシャカ(カニのイラストと共に)」
参加者F:
「チョキチョキ、ブクブク」
感想
※一部抜粋
・筆談のもどかしさがありましたが、自分の気持ちをちゃんと言葉にして他の方に伝える良さがありました。初体験だったので面白かったです。
・自分が感じたことを自由に筆談して、他の方と共有でき楽しかったです。自分には見えていなかった、感じていなかったことを他の方が感じているのを知り、新たな発見・気づきを得ることができ良かったです。
・各々の作品をより近くでじっくり見ることで作者のたちの個性がはっきりと見えてきたのが、とてもゆかいで楽しいです。
・これまで様々な作品を自分の中だけの心情や想像だけで見させていただきましたが、他者と共有することはとても新鮮でひとつの作品だけで色々な見方があることを感じることが出来ました。
まとめ
今回のワークショップは、筆談というコミュニケーションを通して作品鑑賞を行なったことが特徴的である。また、ファシリテーターの重要性も再認識する機会となった。
参加者それぞれが鑑賞した中で気づいた作品の細かな表現や想像したことに対して、ファシリテーターがさらに問いかけを行ない、他の参加者の新たな発見や想像に繋がっていった。
参加者の感想を見ると、自分の気づきや感じたことを都度「書く」ということに対して、それぞれもどかしさはありつつも、ファシリテーターや他の参加者とのやり取りを通して、新たな発見や気づきを得られたということがうかがえた。
筆談で対話することで、自らが感じたことや気づいたことを、一度参加者自身の中に落とし込み自身の言葉にすることで、普段の口話や手話通訳を通した対話による鑑賞とは異なるライブ感や、考えながら鑑賞する部分が多かったのではないかと思う。今回のプログラムでは、
今後も特性に関わらず、共通のコミュニケーション方法などを工夫して、作品をじっくり鑑賞していただけるプログラムを実施していきたい。(東京都渋谷公園通りギャラリー 吉田有里)