先日、「渋ギャラジオ」の今年度の番組「ふたたび交わるおどろき」の最終エピソード(#12)が配信されました。ギャラリー初めてのポッドキャスト。その配信マラソンを、無事に完走しました。
「渋ギャラジオ」(←リンクを貼ります)は、東京都渋谷公園通りギャラリーが2023年度から新しく始めた、音声コンテンツ配信プログラムです。ギャラリーの学芸員が気になるテーマについて、さまざまなゲストと一緒に、おしゃべりしていきます。
2020年に開館してから、新型コロナウイルスとともに歩んできたといえるギャラリー。まずは、グランドオープン記念事業の展覧会「あしたのおどろき」に改めて目を向け、関わった方のなかから3名のゲストに迎えて、この3年間の歩みを一緒にふりかえりました。
展覧会「あしたのおどろき」は、会期途中で臨時休館となり、そのまま閉幕し、関わった皆さんにとっても、学芸員にとっても、消化不良のかたちで終わりを迎えた展覧会でした。
一人目のゲストである末永史尚さん(美術家、東京造形大学教授)には、出展作家としてお話をうかがいました。初回の収録ということで、末永さんも担当学芸員も、最初こそ少し緊張していましたが、時間をかけて作品の設置場所を皆で検討した展示作業の思い出や、コロナ禍は末永さんにとっては制作が進んだよい期間でもあったことなどを聞き、おしゃべりが進むにつれて二人の緊張もほどけていきました。収録は8月で夏真っ盛りだったので、最後には、暑い季節にはぴったりの、末永さんがお好きなカレーのお話もうかがうことができました。
二人目のゲストである家成俊勝さん(dot architects共同代表、京都芸術大学教授)には、会場デザインの設計者としてお話をうかがいました。「あしたのおどろき」の山型ともおにぎり型ともいえる特徴的な仮設壁にいたるまでのディスカッションのこと、また、コロナ禍をきっかけに「パーティーの練習」をしたり、工場と農場(のうば)の2拠点生活を考えるようになったりしたことなどを、お聞きしました。収録当日は10月31日で、ハロウィン当日。いつもより少しにぎやかな街の音を背に、ドキドキしながら収録しましたが、無事に終えることができました。
三人目のゲストである福森 伸さん(社会福祉法人太陽会しょうぶ学園統括施設長)には、出展作家の所属施設であり、スペシャル・セッションのためにメンバーを送り出す施設の関係者として、お話をうかがいました。この収録では、担当学芸員がしょうぶ学園を訪問して収録するという、初めての出張収録でした。収録は1月でしたが、思いのほか暖かく、園内を歩くだけで心地よさを感じられる、とても気持ちのよい収録でした。「あしたのおどろき」のために訪れたときを思い出しながら、福森さんのご案内でしょうぶ学園にあるさまざまな工房や新しいアムアホールを訪れ、アムアの森館長の福森順子さんや利用者の皆さんと交流しながら、お話をうかがうことができました。
アムアホールでは、音パフォーマンス集団otto & orabuのメンバーがスタンバイしてくださっていました。最後には、「渋ギャラジオ」のオープニングとエンディングに流しているジングルの楽曲「CLAP」の生演奏! この曲は、もともと、「あしたのおどろき」の関連イベント、「otto & orabu」(オット・アンド・オラブ)の少人数編成による特別フォーム「ottotto」(オットット)のスペシャル・セッションで演奏されるはずでした。開催日直前で残念ながら中止となったその思いを晴らすべく、力強い演奏を聞かせてくれました。
楽しい収録は一日で終わりますが、その後も編集作業、確認作業は続きます。このプログラムは、音声コンテンツが中心ですので、ろうの方をはじめ、より多くの皆さんに楽しんでいただけるように、各回、全文文字起こしテキストも作成しました。ゲストの皆さんとは、各エピソードの音声とテキストの確認も、一緒に行いました。そういったやりとりがまさに、一回話したら終わってしまうトークイベントとは異なる、ちょっと苦しいけど楽しいマラソンのようでした。
当ギャラリーの愛称ともいえる「渋ギャラ」と「ラジオ」を組み合わせた「渋ギャラジオ」。スタートの今年は、このように、ギャラリーの原点である展覧会「あしたのおどろき」をさまざまな角度からふりかえることができました。次年度以降も魅力的なコンテンツを配信していきますので、ぜひお気軽にお楽しみください。
文:佐藤真実子(担当学芸員)