オンライン対話型鑑賞-記憶の風景を紡ぎだす- 開催報告

インナー・ランドスケープス、トーキョー

(2)Ekuko
●写真作品
小川チーム

ファシリテーターと参加者が作品(《Ekuko》マルヤ・ピリラ)を鑑賞している様子

参加者A:
(モデルの女性が)瞑想しているのかなと思いました。
小  川

この方が瞑想しているのではと思ったのはどこからそう感じましたか?
参加者A:

ポーズと目を閉じているところとか、表情から瞑想されているのかなと思いました。
後ろの壁に逆さに町が映っているところが、彼女の頭の中のように感じました。
小  川

いま、この女性のポーズから瞑想されていて、今瞑想しているシーンがここ(モデル背後の壁)に
映っているということと、町が逆さになっているということですが、町が逆さになっている中で瞑想しているんですかね?
参加者A

そうですね。4 次元? 別の次元に心が行っていて、向きとかの関係ない重力のない世界に行っている、無になっている感じかなと思いました。
小  川

このポーズから連想して、重力のない空間が現れているんじゃないかということですね。

田辺チーム
参加者A:
場所がすごく印象に残って、最初おうちというよりお寺とか道場みたいに見えました。
(壁にある)賞状とか集合写真も、個人の写真じゃなく団体の写真が飾られているのが、
もしこれがご自宅だとしても、色々な人と繋がりあったお家なのかなと思いました。
その一方で対比というか、女性が1人で座禅を組んでいるところとのコントラストが、
結構印象的でズーンとまでは行かないけれど、すごく不思議な感じがする写真だなと思いました。
田  辺

さっきも人生の中にも色々なつながりや、過去があって、かつそれ以外の地域の人だとか
色々なつながりがあるにも関わらず、今1人でいること、目を閉じていることに何か重みを感じるということですよね。
参加者B:

座禅のポーズが自然できれいで、姿勢が良くて指の先まで神経がいっていて、
この後に見る(陶器の)写真でも日舞か何かを習っていたのかなっていう写真があって、
自分を見せる、美しく見せられるっていう意識がある方なのかなと思いました。
田  辺

これはただ瞑想をしている、心の中を見ているというわけじゃなくて、自分の体も鍛錬されている、
指の先まで体を使いこなせるような人なんじゃないかって体の細部から感じとってくれたんですね。

●陶器作品
小川チーム

ファシリテーターと参加者が《Ekuko》を鑑賞している様子

参加者A:
写真の女性が手を広げている形と器の曲線がすごくマッチしている気がするし、
色合いも服装が青で似ているから、写真と器が同じもののように見えて、
すごくマッチしているなと感じました。器が女性そのものに見えてきました。

小  川
女性のここの部分(座禅を組んで手を広げている部分)と器の形(曲線)が
リンクして器自体が女性そのものを表現されているということですね。
参加者B:

この後ろの円窓の印象と器の形が共通しているなと思います。
小  川

この器のまるい形が共通点でありますよね。
参加者B:

マルヤさんと陶芸作家の方が、作品上で共鳴し合っている感じがします。
小  川

作品上で共鳴し合っている・・・確かに、ここから見るとより感じますね。

田辺チーム

ファシリテーターと参加者が作品(《Ekuko》Satoko Sai +Tomoko Kurahara)を鑑賞している様子

参加者A:
陶器の縁が微妙になめらかではないんですよね 。でこぼこ、ギザギザしているんですよね。普通だとなめらかにしますよね。
3日前の陶芸教室で実際に陶芸を初体験したんですけれど、必ず最後には縁を平らになめらかにしましょうと言われていたので、
こんなギザギザになっているのを見て人生の起伏を感じました。
田  辺

他(1作品目で鑑賞した《Miina&Gijin》)は男性的なワイルドな器であるのに対して、この器は綺麗な丸なのにこの縁が 
ぼこぼこ整えられていない感じが、ただ幸せだったというだけじゃなく何か人生の起伏や明暗みたいなものも感じられるということですね。
参加者B

私はお抹茶の平茶碗みたいだなと思いました。高台もちゃんとあって。
多分お着物の写真に引っ張られているんだと思いますけど、先ほどの器よりも、

日本の器みたいな印象を受けて、そういった伝統的なものに関わっている方なのかなと思いました。
田  辺

ありがとうございます。器の形にも注目して、先ほどの器(1作品目で鑑賞した《Miina&Gijin》)は色々なモチーフが付いていたり、 形も独創的ですが(この器は)整えられたお茶碗のようで、しかもちゃんと高台が付いていて、
和風の昔ながらの伝統的な形に見えて、(器に使用されている写真の)お着物の様子からして、   
何かそういった伝統的なことをされている人なんじゃないかなと想像してくださったんですね。

【参加者の感想】(※一部抜粋)
●作品を一人で漠然と鑑賞するだけでなく、さまざま意見によって、またあらゆる場面にイメージを膨らませながら、想像を巡らせながら発見し、参加者全員で探求していく面白さを感じました。何よりも、作品を通じ、画面を通じ、映像を通じ、人と人との繫がりを感じ、さらに気持ちが解放される、心のゆとりを取り戻してくれる充実した時間でした。

●オンラインで作品鑑賞、そして対話型鑑賞という内容にまず興味が湧き参加しました。 2 時間があっという間、心から楽しみました。素敵な作品に出会った時や、美術館の帰りに何とも言えぬ心満たされた感覚と同じでした。それがリモート、そして自宅で感じることが出来たことが不思議な体験で、これからの時代のアートに触れる機会の一つになっていくのだろうとも思いました。

【まとめ】
 当初、本イベントは展覧会「インナー・ランドスケープス、トーキョー」の会期中に開催する予定でした。新型コロナウイルス感染症拡大防止のため開幕が延期となり、展覧会開幕前の開催となった。開幕前の開催ということで、参加者の皆さんは本イベントで初めて作品を鑑賞することになった。
 参加者の方の中にはオンラインでの対話型鑑賞に参加されるのが初めての方も多くいらっしゃいましたが、企画とファシリテーターを務めた小川桂以子、同じくファシリテーターを務めた田辺梨絵のファシリテーションによって、午前の部と午後の部どちらも終始穏やかな雰囲気で、それぞれの参加者の皆さんが作品から想像するモデルの方の姿や背景にある物語など、それぞれの感性の交流と共有をすることが出来る空間となった。また、画像を使用することで普段は近づくことができない距離から作品の細部を鑑賞することができ、参加者間の満足度の差が生まれにくくなったのではないかと思う。
 また、コロナ禍で気軽に外出ができない状態の中でオンライン上で開催したことで、ご自宅などから気軽に参加できるため、関東近郊に留まらず日本各地や国を越えて参加することが可能となった。さらに、展覧会開幕前の開催となったことで、ギャラリーまで足が運ぶことが難しい方や展覧会を開幕後に実際に作品を鑑賞する予定の方にとっても、開幕前に作品について深く考えるきっかけとなり、本イベントに参加した後に実際の作品と出会う楽しみや新たな気づきを感じていただける機会となった。

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