
| 基本情報 | 見どころ | 出展作家 |
本展は、国内の4つの福祉施設で行われている「やきもの」の制作に、様々な形で関わる7名の作り手による作品を紹介する展覧会です。
本展では、作品の魅力を2つの視点から探ります。
一つ目の視点「粘土とふれあう」では、心に描くイメージを立体的な形に表現する過程に着目し、特徴的な造形の魅力に迫ります。
二つ目の視点「人とふれあう」では、やきものを制作する場とそこに関わる多様な人々のふれあいに着目します。
出展作家が様々な立場で関わる、4つの施設での創作現場の記録映像等を通し、やきものが人々をゆるやかに繋げる場を生み出し、それぞれの作り手に新たな関係性や創作意欲をもたらす様子を紹介します。
本展が、やきものの新たな魅力と、創作の場における多様な人々のふれあいを知る機会となれば幸いです。
| タイトル | ふれあうやきもの |
|---|---|
| 会場 | 東京都渋谷公園通りギャラリー 展示室 1・2、交流スペース |
| 会期 | 2026年2月14日(土)ー5月10日(日) |
| 開館時間 | 11:00~19:00 |
| 休館日 | 月曜日(2/23、5/4は開館)、2/24、5/7 |
| 入場料 | 無料 |
| 出展作家 | 植田佳奈、大井康弘、七理摩弓、土橋美穂、西村妙子、八耳慶哲、吉成洋平(五十音順) |
| グラフィック・デザイン | 前原翔一、小山麻子 |
| 主催 | 東京都渋谷公園通りギャラリー(公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館) |

福祉施設のアトリエで創作を行う5名の作家と、その創作活動をサポートする2名の陶芸家の作品62件(うち陶芸作品57件、絵画5件)を紹介。花瓶や壺のように用途を持つ器から、「ガネーシャ」や動物の姿をかたどった作品、オブジェ的な造形作品まで、多様な陶芸作品が集結します。
作家やかれらをサポートする方々へのインタビューや、それぞれの作品の制作過程を、本展のために新たに撮影。作品制作の秘密と、やきものが生み出す人とのふれあいを映像でご紹介します。会期期間中のみの限定公開となります。
出展作家の植田佳奈による公開制作を交流スペースで開催。象嵌の技法を用いて、作品の表面に多彩な質感を生み出す植田佳奈の創作の現場に立ち会うことができます。出展作家や関係者によるアーティスト・トークも開催。このほか交流スペースでは植田佳奈と吉成洋平のさわれる作品も展示します。
■植田佳奈 公開制作
開催日時:2026年3月29日(日)14:00 ‒ 17:00[申込不要]
出展作家の植田佳奈が当ギャラリー内交流スペースにて公開制作を行います。同日に作家によるトークも予定。
アクセシビリティに関する取り組みとして、「手話による展覧会案内動画」を会場内で公開予定。また、当ギャラリーで活動する鑑賞サポーターによる鑑賞会なども予定しております。

植田佳奈《象嵌石ころ》2024年、作家蔵
1992年生まれ。2015年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科陶磁専攻卒業。粘土に線や点を刻み入れる過程で偶然生まれる形や質感に導かれ、自然の営みを感じさせる作品を制作している。自然物の観察と、素材の実験を繰り返しながら、陶による新たな表現を試みている。また、福祉施設「8-18」に通う方々と共に絵画や陶芸も行う。主な展示に「石をみる」(2024年、東京、ROUND ROBIN)などがある。

大井康弘《ガネーシャ》2013年、やまびこ福祉会蔵 撮影:大西暢夫 提供:ボーダレス・アートミュージアムNO-MA
1983年生まれ。創作ヴィレッジこるり村(滋賀県)に所属し、陶芸作品とコラージュを制作している。陶芸では、芯材の上に、あらかじめ用意した粘土のパーツを繰り返し積み重ねていくことで、ガネーシャやイノシシなどを表現している。細かいパーツに分解されたモチーフは、大井の手によって再構成されて新たな形に生まれ変わる。主な展示に「HELLO開眼」(2017年、滋賀、ボーダレス・アートミュージアムNO-MA)などがある。
七理摩弓《総銀彩vase》2025年、作家蔵
1985年生まれ。2007年京都造形芸術大学美術・工芸学科陶芸コース卒業。陶によるインスタレーションやオブジェなど、多岐にわたる作品の制作を経て、現在は古陶磁や青銅器等に着想を得た器を中心に制作している。南山城学園(京都府)が運営する障害者支援施設内にあるアトリエの担当としても活動している。主な展示に「京都工芸ビエンナーレ」(2010年、京都、京都文化博物館)などがある。

土橋美穂《アリクイ》2020年、nullus蔵
1971年生まれ。福祉施設「8-18(はちいちはち)」(神奈川県)に所属し、陶芸・絵画・縫いぐるみの制作などの創作活動を行っている。陶芸では、アリクイ、キリン、象などの動物をモチーフとした作品を制作している。それぞれの動物の特徴を捉えつつ、物語性を感じる作品を生み出している。主な展示に、第5回 日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS 公募展」(2022年、東京、Bunkamura Gallery / Wall Galleryほか)などがある。

西村妙子《無題》制作年不詳、南山城学園 円蔵
1963年生まれ、2024年没。南山城学園 円(京都府)に所属し、粘土による制作を行っていた。机の上に置かれた粘土の表面を指で彫り、指先で軽く捏ねた後、床に落とすという行為を繰り返した。表面に彫る部分が無くなると、粘土の塊全体を床に落とすこともあった。粘土と対話した時間の痕跡が、やきものとして一つの形になっている。主な展示に、「南山城学園の粘土室」(2023年、京都、art space co-jin)がある。

八耳慶哲《無題》2022年、やまびこ福祉会蔵 提供:やまびこ福祉会
1981年生まれ、2024年没。やまびこ作業所(滋賀県)に所属し、闘病を続けながら陶芸作品を制作した。全盲の八耳は、手のひらの感覚を頼りに、紐状に伸ばした粘土を積み重ね、作品を作り上げた。病状が進行し、制作を続けることが難しくなったが、体力が持つ2時間を開催期間として、2024年11月に展覧会「again,」を開催した。主な展示に「やまびこ展」(2024年、滋賀、竜王町公民館)がある。
吉成洋平《ん~ん~ん~》2023年、作家蔵
1986 年生まれ。障害者支援施設ひばり(栃木県)に所属し、絵画と陶芸の制作を続けている。陶芸では、粘土を紐状に成形し、それを幾重にも積み上げて立体化していく。積み上げた粘土から、波のようなうねりが生まれ、躍動感のある形態が完成する。作品名は、嬉しい時や気持ちが高ぶった時に出る本人の言葉からつけられることもある。主な展示に、「Art to You ! 障がい者芸術世界展 INSENDAI 2024」(2024年、宮城、せんだいメディアテーク)などがある。