齋藤春佳「とどく」2

「とどく」齋藤春佳

2021年5月25日
青梅街道の横断歩道を自転車で渡り終わったところで、猫がフタをされた自転車のカゴの中で鳴いている声が聞こえてきたから「二ャ」と返事した後それが自転車のカゴから聞こえて来たのに気づいたという順番でそこに猫がいることを知ったけれど、聞こえなかったらこの猫は、私にとって居なかった。シュレディンガーの猫好きな人(誰?)が好きそうな話。

もう少し家の方へ進んで踏切の前で停車していると、しばらく間を置いてまた背中の方に猫の声が自転車の速度で近づいてきて、一拍置きに様々な抑揚のバリエーションの声色で連続して鳴く猫の声は、踏み切りの”カンカンカンカン“という音の合間にちょうど入ってきて、
“カンカニャカンカニャカンカニャ”というリズムが愉快なのを
聞こえなかったらわからないが、
そこで顔を上げた時目に入る踏切の赤い2つの丸ランプの互い違いの点滅のちょうど後ろを、紺色の電車の窓が過ぎていく時のリズム、みたいなものの方がゆたかかもしれない。

ひとりはひとつの経験しかできない。

なんかギフトカードで買えるair pods とair pods proのどちらにしようか迷って”ノイズキャンセリング怖い”と思ってそれがついてないair podsにした。不注意で何かに激突したりしそうだから。
想像してみると、周囲の音が聞こえないのが私はこわい。

【文:齋藤春佳】

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