齋藤春佳20【自分のお腹作ってるみたい/すれ違ってしまっていた(Kさん)】

「とどく」齋藤春佳

2022年7月14日の日記から

陶芸の工芸室、
午前中、渋谷公園通りギャラリーTさんの作品調査、
午後、Yちゃん(友達)が制作してるところを見に来るという遊びというか、多分挿絵の相談も含めての、私が長野へ行ってしまうタイムリミットを鑑みての、訪問。

Yちゃんから
「見つめ返されないのって
見つめ返されないけど
けっきょく会えたってはなしなんだっけ」
と訊ねられて、
私「ううん、見つめ返されないと会えないってことに結論がいってた」
Yちゃん「Yちゃんが長谷川潤のことインスタでフォローしてるみたいなこと?」
私「そうそう、」

そうそうって言ったけど、そう?
釉薬拭き取ったりしながらめっちゃ適当にそうそう、って言ってたけどそれを分かって許してくれてるYちゃん。

でっかいお腹で、同じくらいのボリュームの陶芸を作っているところ、写真や動画で撮ってくれていた。
外から見るとなんかほんと自分のお腹作ってるみたいなボリューム。


2022年7月19日の日記から

油絵描いてて、お昼過ぎちゃったし今日夕飯決まってるし、なんかパンでも食おうか…と思ってスーパーに行って、でも食べたいパンがないな…と眺めていたら、「さいとうさん、さいとうさん」とちょっと距離があるところから小さく呼びかけられて、
近所に私をさいとうさんと呼ぶ距離の人物の覚えがないからびっくりしたら普段心臓の調子を診てもらってる内科の先生で、
「もうすぐですね、元気な赤ちゃんを産んでくださいね〜」
と言われて嬉しいのと、ボロボロ油絵ルックでパン食お〜としてたからちょっと恥ずかしかった。
でもこの、見かけたからといって声かけようと判断してくれる感じも含めて、この先生でうれしいな〜と思った。名前覚えてるのすごいな。

Iにその出来事話したら、
「普通声かけるかね笑。めちゃいい先生じゃん」って言ってて同意した。
見かけたからといって会うとは限らないから。

昨日会ったI家の生まれて2週間しか経っていないあかちゃんが忘れらんない。肌がやわらかい〜、なんだか犬みたいなてざわり。ぷりぷりじゃなくて、ふにゃふにゃ。やみつきになる。今も会いたい。
自分のお腹の中の赤ちゃんにも触りたいよ〜と思うけど触るよりも近くにいる。今は私はクリーム玄米ブラン食べてるのでその味が伝わってるかもしんない。
I家の赤ちゃんから、見つめ返されたけど、まだ目が見えてないという話だった。
それって会えたのかな?
会えたよな〜、抱っこしたもん。
これを会ってないということにしちゃったら、何を会っているということにするのか、本当に頭おかしくなっちゃう、ダメダメ

————

手紙が届いたと連絡をもらって、ゲットする。
Kさんからの手紙。
(齋藤春佳19 お互いに不便なスペース)で送った指文字の手紙への返信だ!と色めきたつ。
そしたら、指文字で送った内容に対して、全く触れていないお手紙で、すごくショックを受けた。
どうしてだろう。
やっぱり嫌だったんだろうか。
私が下手だったから読めなかったんだろうか。
里帰り出産で制作できなくなるその前にと、制作をギュンギュンに重ねている中なのもあってか、
なんだか、一瞬、さすがにめげた、というような気持ちになった。

(今改めて見返したらこの手紙の消印は7月4日とあった。
ということは、私が指文字の手紙を送ったのと同時くらいに、Kさんも手紙を送ってくれていたのだ!
だから、指文字に返信しようがなかった。
まだ届いていなかったから。
すれ違ってしまっていた。
東京ラブストーリーくらいすれ違い。
愛してると言ってくれくらいすれ違い。
ケータイあったら起こらないすれ違い。
もしかしたら、指文字の手紙を私が書いているときには、私の手元にこの手紙が来ていてもおかしくなかった、
もしかしたらもっと前に届いていたんだけれど、
何かによって、それが手元に届くタイミングが、ずれたことで、少し、誤解みたいなことが生じた。
だけど、もし届いていたら、受け取っていたら、
私はKさんに指文字では手紙を送らなかったかもしれない。)

【文・画像提供:齋藤春佳】

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