齋藤春佳 6【待っている/偏ってます/大変なわけ】

「とどく」齋藤春佳

2021年6月20日の日記から

朝ずっとくらくらしている。

コレクティブの集まりが小金井公園で催されていて、シャトーにいく道すがらだしRも行くから寄ったら、田中くんと久しぶりに会う。手紙をとにかく出してブログも書いてポスターも書いて、待っている。待っている…と言っていた。
公園に向かうまでの道中シュロの木見かけて、あ、って思って写メ撮ってインスタグラムのストーリーにあげる。

シャトーに搬出と展示見に向かう。
大木さんは最終日だからかちょっといつもよりも強いムードを持っていた。去年もそうだった。と思う。
「あんた渋谷のは?」「なんかやり取りが偏ってます」「僕はね、今はね…とにかく色々大変なわけ…」

作品を持ってとぼとぼ駅まで向かうと
「わ!」
「うわっ」「えー!わかってたのに!0.5秒くらいTさんだってわかってたのに飛びあがっちゃった、」
「きゃーちかんよー!って言わなきゃ」
「え~言えませんでした?!なにそれぜんぜんわかんない」

わかれわかれになって
Tさんって、わ!とか言うんだ、人を驚かせたりするのか、でも、そういう、happenみたいな作品なきはする、出会い頭というか、でも、草むらの静かな野生動物のようなイメージだったから、こんなふうに私に親しみをもってくれているのか?うれしい…
ちかんという言葉や冗談が引き連れてくる最悪をひとまず雑に差し引いてもまだ残る、この、親しみをもってもらえてうれしい、というきもちで、私はたったこれだけでこの今日を夜まで生きられる、と思った。
夕方の空きれい。

【文:齋藤春佳】

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