「一通目」
みなさまはじめまして。美術作家の田中義樹です。
今回この、レター/アート/プロジェクト「とどく」で、児童養護施設の「子供の家」の方達と文通を始めることになりました。美術作家が文通をする今回のプロジェクトで、始まる前からなんだか楽しそうだなと思ってワクワクしていました。
12月にはキックオフイベントのトークショーで、「子供の家」で自立支援コーディネーターとして仕事をされている角能秀美さんとお話をさせていただきました。その時の様子はYoutubeで配信もされているのでぜひ見ていただけたらと思います。
自分以外の参加作家の齋藤さん、大木さんのお話もぜひ聴いてみてください。とっても面白いです。
そして、角能さんが「子供の家」の方たちに声をかけてくれて、自分と文通をしても良いという子が二人出てきてくれました。一月に入ってからまず自分からその二人に手紙を書きました。知らない二人に手紙を書くので自己紹介と、最近はどういうことをしていますか?とか、何が好きですか?とか、質問ばかりの手紙を書きました。実際、知らない作家と文通をしてもいいだなんて言ってくれたのはどういう子たちなんだろうと思っていたので、たくさん質問をぶつけた手紙を書いたのでした。
自分と文通をして少しでも得した気分になってほしくて、手紙を食べる黒ヤギさんと白ヤギさんの彫刻を作って小包にして二人に分けて送りました。プチプチでグルグル巻きにして送ったのですが、途中衝撃で割れないかと心配でした。もしも開けたら壊れてましたとかの返事がきたら作り直して送ろうかしらとか考えたり。
手紙を送ってから、最初の一週間返事を待っている間なんとなく普段生活していても、頭の片隅にどんな返事か来るかなということがありました。もしかしたら失礼なことを書いてしまっていないかとか、手紙を見て、返事書くのやめようとか思ってないかなとか、やきもきしていました。
今は、オンラインの速度の速いやりとりが主流なので、こういうやきもきする時間も少なくなったなと思います。手紙を待つ時間、知らない相手のことを考えることは今の時代では得難い、素敵なことなのかもなと思ったりしました。
もうすぐ4月、今も二人から返事は来ていません。返事は来てないけど、もう一回手紙を書いてみようかななんて思ったりします。もしかしたら、それも急かしているみたいでうざったいのかしら。ラインだったら2ヶ月、3ヶ月返事がなかったら、もう忘れられたのかなとか思ってしまうのですが、手紙だと「まだかなー」とひたすらにまててしまうものですね。自分も書き忘れていた手紙を、届いてから半年後に書いたことがあるので、別にまだ大丈夫かなと構えています。
このやきもきも文通らしくていいなあと思っています。
【文・画像提供:田中義樹 2021年3月30日】