語りの複数性
見ることや聴くことは、受け取る人がいて初めてそこに現れるという意味で、その人が語ることでもあります。物事を受け取り表現する方法は、ひとつではありません。視覚を使わずに見る人、手話を使って話す人がいるように、人の身体の数だけ、“語り” はさまざまに存在します。それは、限られた人の特殊な方法ではなく、本当は誰もが持っている、自分と異なる他者や物事とともに生きるための能力と言えるでしょう。
この一年半ほどの間、未知の世界に偶然足を踏み入れることや他人と肩を並べる時間が減ったことは、私たちの身体を大きく変容させました。本展では、固有の感覚や経験に裏打ちされていたり、見えない“語り”を自分の経験として受け取り、表現するさまざまな試みが描かれています。それらの作品を通して、訪れる人の想像する力を借りて、鑑賞することがそれぞれの独自の体験として立ち上がる場をつくります。情報が溢れるからこそ貧しくなっていた、さまざまな語りのあり方と、その語りを紡ぎ出す身体を想像する展覧会です。
タイトル | 語りの複数性 |
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会期 | 2021年10月9日(土)~ 12月26日(日) |
開館時間 | 11時~19時 ※百瀬文の作品は、30分毎の入れ替え制で上映します(毎時0分/30分開始、上映時間25分)。 予めご注意の上、ご来場ください。 |
閉館日 | 月曜日 |
会場 | 東京都渋谷公園通りギャラリー 展示室 1、2及び交流スペース |
入場料 | 無料 |
出展作家 | 大森克己、岡﨑莉望、川内倫子、小島美羽、小林紗織、百瀬 文、山崎阿弥、山本高之 |
会場構成 | 中山英之建築設計事務所 |
主催 | (公財)東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 東京都渋谷公園通りギャラリー |
アクセシビリティ | 鑑賞にあたり音声ガイドやテキスト配布のほか、より多くの方たちに展覧会を味わって頂くためのツールを会場にて貸し出し致します。 ※音声ガイドはYouTube上で公開しております。 |
その他 | イベント開催時のチェックリスト |
展覧会「語りの複数性」会場風景
目が見えない方、見えにくい方を優先に、音声ガイドを貸出ししています。
空間情報を加えた作品解説に加えて、一人で来ていても誰かと一緒に作品を見ているように鑑賞ができる「一緒に見る音声ガイド」もご用意しました。
ご希望の方は受付にお声がけください。
合計時間:約70 分
*一作品ずつ選んでお聞き頂けます。
<作品解説>
テキスト:田中みゆき
声:大石将弘、石田迪子
<一緒に見る音声ガイド>
創作・声:大石将弘、小山薫子
創作:北村美岬
協力:視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ
録音・整音:長尾憲一
写真家。近年の主な個展に「sounds and things」(MEM、2014年)、「山の音」(テラススクエア、2018年)、参加したグループ展に「GARDENS OF THE WORLD」(Museum Rietberg、2016年)などがある。主な写真集に『サナヨラ』(愛育社、2006年)、『すべては初めて起こる』(マッチアンドカンパニー、2011年)、『心眼 柳家権太楼』(平凡社、2020年)など。
1988年愛知県生まれ、北海道在住。ギャラリー門馬 ANNEX(2015年)、ギャラリー門馬(2018年)にて個展開催。参加したグループ展に「アール・ブリュット作品全国公募展」(2015年)、日本のアール・ブリュット 「KOMOREBI」展(2017年)、第6/7回全国公募「ドローイングとは何か」展入賞入選作品展(2016、2018 年)など。
写真家。1972年滋賀県生まれ。2002年『うたたね』『花火』の2冊で第27回木村伊兵衛写真賞を受賞。著作に『あめつち』(青幻舎、2013年)、『Halo』(HeHe、2017年)など。国内外で多数の個展・グループ展を開催。近刊に写真集『Des oiseaux』(HeHe、2021年)がある。10月中旬に『Illuminance: The Tenth Anniversary Edition』をtorch pressより刊行予定。
1992年埼玉県生まれ。2014年に遺品整理クリーンサービス(株式会社ToDo-company)に所属し、遺品整理やゴミ屋敷の清掃、自宅死(孤独死)や殺人、自殺などの現場の特殊清掃に従事する。孤独死の現場を再現したミニチュアを2016年から独学で制作開始し、国内外のメディアやSNSで話題となる。
1988年神奈川県生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科を卒業後、音楽を聴き浮かんだ情景を五線譜に描き視覚化する試み「score drawing」の制作を開始。映画におけるろう者の方のための絵字幕の作成など、音にまつわる制作を行う。
アーティスト。映像によって映像の構造を再考させる自己言及的な方法論を用いながら、他者とのコミュニケーションの複層性を扱う。主な個展に「I.C.A.N.S.E.E.Y.O.U」(EFAG、2019年)、「サンプルボイス」(横浜美術館アートギャラリー1、2014年)、主なグループ展に「彼女たちは歌う」(東京藝術大学大学美術館陳列館、2020年)、「六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声」(森美術館、2016年)など。
声のアーティスト。反響定位に近い方法で捉えた空間の音響的な陰影をパフォーマンスやインスタレーションによって変容させ、世界がどのように生成されているのかを問い続けている。2022年は「KYOTO STEAM 2022」(京都市京セラ美術館)「JAPAN. BODY_PERFORM_LIVE」(ミラノ現代美術館)に出展。
アーティスト。1974年愛知県生まれ。子どもの会話や遊びに潜在する創造的な感性を通じて、普段は意識することのない制度や慣習の特殊性や個人と社会の関係性を描き出す。主な展覧会に「ゴー・ビトゥイーンズ展:子どもを通して見る世界」(森美術館ほか、2014-15年)、「山本高之とアーツ前橋のビヨンド20XX 未来を考えるための教室」(アーツ前橋、2019年)など。
大森克己
《心眼 柳家権太楼》(2019年)
岡﨑莉望
《目》(2014年)
川内倫子
《はじまりのひ》(2018年)
小島美羽
《終の棲家》(2019年)写真:加藤甫
小林紗織
映画『うたのはじまり』絵字幕(2019年)
*参考画像
百瀬文
《聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと》
(2013年)
山崎阿弥 《島膜_Ibuki》(瀬戸内国際芸術祭2019) *参考画像
山本高之
《悪夢の続き》(2020年)
※関連イベントは随時お知らせいたします。
詳細は各イベントページにて随時お知らせいたします。
「語りの複数性」関連イベント
プレトークでは、展覧会「語りの複数性」のはじまりや出展作家の紹介をしながら、展示室において鑑賞者による複数の想像が立ち上がる空間をどのように設計できるのか、本展の会場構成を担当する建築家の中山英之さんにお話を伺います。
※ろう者による手話通訳+バリアフリー日本語字幕付き
「語りの複数性」関連イベント
本展企画担当者が会場にて作品解説を行います。(30分程度を予定)
※当日先着順(要整理券)。
開始1時間前より整理券を配布いたします。(整理券配布場所:展示室受付)
※手話通訳付き
「語りの複数性」関連イベント
10月23日(土)16時から18時にかけて、出展作家の山崎阿弥さんが在廊し、 時々館内にて声のパフォーマンスを行いました。当日の様子を、トークの映像とともに、配信中です。
「語りの複数性」関連イベント
出展作家の小島美羽さんに、作品や制作について伺いました。
「語りの複数性」関連イベント
普段は想像もしない誰かの身になって考える、そんな体験ができる最も身近な方法のひとつとして読書があるのではないでしょうか。そんな思いから、読書会を開催します。 同じ一冊の本を、アイデンティティや障害の有無、セクシュアリティの異なる私たちで読み、私たち自身の経験や触発された情動の、複数のままならない「語り」を一緒に体験しませんか。
《聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと》を巡って
展覧会「語りの複数性」の出品作品である《聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと》について、本展企画担当の田中みゆきが出展作家の百瀬文さんにインタビューしました。