オンライン対話型鑑賞-記憶の風景を紡ぎだす- 開催報告

インナー・ランドスケープス、トーキョー

【イベント概要】                                  
実施日時:2021 年3 月6 日(土) 
    午前の部|10:30~12:30 
    午後の部|14:30~16:30 
会  場:オンライン開催(Zoom)
講  師:小川桂以子(企画・ファシリテーター)、田辺梨絵(ファシリテーター)
主  催: 東京都渋谷公園通りギャラリー

 歴史の本には書かれない、様々な人々の個人的で日常的なエピソードが写真と陶器によって視覚化された展覧会「インナー・ランドスケープス、トーキョー」の展示作品をファシリテーターとともに、参加者の皆さんと対話をとおして鑑賞した。さらに作品によって呼び起こされた参加者自らの「記憶」を語り合い共有することで、オンライン上でしか体験できない「もう一つの物語」を紡ぎだした。
 今回は各回定員10名に対して、午前の部10名、午後の部9名となり、関東圏や国内だけにとどまらず、年齢層も20代~60 代と幅広い世代のみなさまにご参加いただいた。

【イベントの流れ】
①インナー・ランドスケープス、トーキョー及び出展作家の写真家マルヤ・ピリラと陶芸作家ユニットSatoko Sai +Tomoko Kurahara の紹介
②2つのブレイクアウトルーム(小川チーム田辺チーム)に分かれて、自己紹介を兼ねたアイスブレイクタイム(自分の人生で初めての記憶について共有)
③事前に撮影した写真をもとに参加者全員で作品を鑑賞する
④②と同じ2つのブレイクアウトルームに分かれ、ファシリテーターとともに作品を対話しながら鑑賞する
⑤作品のモデルになられた方のインタビュー動画を視聴する
⑥ブレイクアウトルームに分かれて、もし自分の「inner(内面の)」「landscape(風景)」の陶器作品があったらどのような形や色かを想像して共有する

【イベントの様子】
 本イベントでは《Miina&Gijin》、《Ekuko》を取り上げ、それぞれの写真と陶器を鑑賞した。
鑑賞の際に作品の事前説明はなしで対話を行なった。また、正解を求めるのではなく作品自体から何を感じたか、
どのような背景を想像するかなど、作品を細部まで鑑賞する中で発見したことや感じた雰囲気などをファシリテーターや参加者同士で共有した。下記は作品鑑賞の際の参加者の対話の中から一部抜粋したものである。

⑴Miina&Gijin
●写真作品

小川チーム

ファシリテーターと参加者が作品(《Miina&Gijin》マルヤ・ピリラ)を鑑賞している様子

参加者A :
パッと見た印象が薄暗くて、木漏れ日みたいなのがちらほらっとしか入っていなくて、
左側とご夫婦の後ろ側が全体的にグリーンのちょっと淀んだ感じなので、藻が茂ったような水の中に沈んでいるような、

日本の神社とかの池の中にいる人達のように感じました。
小  川
後ろ(モデルの背後)にあるものが波紋のような気がして、そこが神社にあるような池のところで、中にいる感じがする?
参加者A:
そうですね。あと左側の手前もあと天井の近くなのかな、ちょっとずつ緑が入っていて。
小  川
全体的に池の中に入っているというような感じ?
参加者A:
そうです。すごくハッピーな感じかというと、なんかちょっと寂しいような雰囲気も感じました。
小  川
その寂しいっていうのは、さっきも木漏れ日のようなっておっしゃっていましたけど、
それもこういうところから感じられたんですかね?
参加者A:
そうです。全体的にちょっと暗くて、ちょっと藻が茂っているように見えました。

田辺チーム
参加者A:
お2人が出会ったところを想像してみたら、水辺や海の様なところで出会っているのではと感じました。
田  辺
ご夫婦じゃないか?と思ったのはお2 人が寄り添っているから?
参加者A:

そうですね。
田  辺
お2 人が出会ったところが水辺なんじゃないかと思ったのはどの辺から?
参加者A:

画面向かって左側のガラスか戸に映り込んでいる風景が海の中のように見えました。
それがお2 人の出会いを表現しているのかと感じました。

●陶器作品
小川チーム

ファシリテーターと参加者が作品(《Miina&Gijin》Satoko Sai +Tomoko Kurahara)を鑑賞している様子

参加者A:
私がこの2 つの陶器を見たとき、右側がスパッと上が切れているのが気になりました。
左側は器っぽい形であるのに対して、右側は付け足してあったり、なぜこんな感じでスパッと切れているのか、
お2 人の間にある違いなのかな?
記憶は一緒で、モチーフの写真やクッキーなど共通するものがあるのに、どうしたらこんなに形が違うのだろうと気になりました。
小  川

形のちがいに注目して、特に右側の上は上はスパッと切れていて、付け足しがあって、
2つの器にはすごく形の違いがあることに着目してくださったんですけれど、
共通点はあるけど形の違いでお2 人を表現しているのではないかという印象を受けたお話をしてくださいました。
参加者A:
はい、そうですね。

田辺チーム

ファシリテーターと参加者が《Miina&Gijin》を鑑賞している様子

参加者A:
2つの器に両方とも同じビスケットがあるなと思いました。気になって検索してしまいました(笑)
田  辺

2つに共通しているものだからなんだろうって気になったんですよね?
参加者B:

男性が左の茶色い方ですよね?
写真をズームした時に、文字が転写されてて「コンテンポラリーアート」と見えたんですよ。
最初の写真で花瓶が筆みたいに見えるっておっしゃっていた方がいましたけど、「 コンテンポラリーアート」と書くぐらいなので、何かアートに関わっている人なのかなと・・・
この文字というか手紙というか、そこから想像が膨らみました。
田  辺

さっきの写真(初めに鑑賞したマルヤの写真作品)とも何か繋がってくるんじゃないか、アートに携わっている、
そんな感じもあるんじゃないかということでしょうか。

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